第157章

佐藤凛は彼女の手をじっと見つめたまま、しばらく反応できなかった。

「何、何て言ったの?」佐藤凛は機械的に顔を上げ、山田澪の目を見た。幻聴かと思うほどだった。

山田澪はもう一度手話で繰り返した。「ここから出て行きましょう。もう戻らないで」

「本気?」

以前は説得しても無駄で、山田澪はいつも彼女と一緒に逃げることを拒んでいた。時間が経つにつれ、佐藤凛もそういうものだと諦めていた。

今、山田澪が自ら切り出したことで、逆に佐藤凛は緊張し始めた。

山田澪は重々しく頷いた。もう決めたのだ。彼女たちはもう戻れない。

戻ったところで北村健にどう向き合えばいいのか分からなかった。彼を説得して佐藤...

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